築二十年を超えるマンションの管理組合を運営する立場から申し上げますと、給湯器の水漏れは共用部や階下への被害に直結する最も恐ろしいトラブルの一つです。戸建て住宅であれば自家の庭が濡れるだけで済みますが、マンションの廊下やパイプシャフト内に設置された給湯器から水が漏れると、その水はコンクリートのわずかな隙間や配管の貫通部を伝い、階下の天井にシミを作り、家財道具を汚し、時には電化製品を破壊します。ある事例では、上階の給湯器から数日間にわたって漏れていた水が、下階のリビングに滝のように降り注ぎ、被害総額が数百万円に達したこともありました。こうした事態を防ぐために、管理側として最も腐心しているのが、居住者への「十年の壁」の周知です。給湯器は外見が綺麗であっても、内部の消耗品は確実に劣化しています。特に水漏れの予兆として、給湯器の排気口付近が煤けていたり、酸っぱい臭いがしたり、作動中にピーという異音がしたりする場合は、内部で水が漏れて不完全燃焼を起こしているサインですが、これに気づける居住者は多くありません。私たちは毎年の消防点検や排水管清掃の際に、業者の目を通じて給湯器の底面の錆や濡れを確認するようにしていますが、それでも突発的な事故は防ぎきれません。最近では、水漏れを検知すると自動的にバルブを閉鎖するセンサー付きの機種も増えていますが、古い物件では導入が進んでいないのが現状です。管理者の視点からアドバイスをさせていただくなら、給湯器の水漏れは「自分の家だけの問題ではない」という意識を持っていただきたいということです。特に冬場の凍結シーズンや、梅雨時の多湿な時期には、給湯器の周囲に異常がないかを週に一度は確認する習慣を持っていただくよう、掲示板などで呼びかけています。また、万が一に備えて、個人の火災保険に「個人賠償責任特約」が付帯されているかを確認しておくことも、集合住宅で安心して暮らすための必須条件と言えます。水漏れが起きた際、加害者になってしまう苦しみは計り知れません。早めの点検と交換こそが、隣人との良好な関係を守るための最高の防衛策なのです。
集合住宅の管理者から見た給湯器の水漏れリスクと対策