私が中古で購入した築三十年を超えるマンションで、キッチンの蛇口からポタポタと水が漏れ始めた時のことです。パッキンの交換くらいなら自分でできるだろうと高を括っていましたが、作業を始める前にまず水を止めようとした段階で、大きな壁にぶつかりました。シンクの下を確認しても、あるはずの止水栓が見当たらないのです。最近のシステムキッチンであれば扉を開ければすぐに配管が見えますが、私の部屋のキッチンは古い木製の収納棚が据え付けられており、背板が完全に配管を覆い隠してしまっていました。スマートフォンで「止水栓、どこ」と検索し、一般的な場所はすべて当たりましたが、それでも見つかりません。トイレの止水栓はすぐに見つかりましたが、家全体の元栓を閉めるために玄関外のパイプシャフトを確認したところ、そこには長年の埃を被った古いバルブがあり、あまりに固着していて素人の手ではびくともしませんでした。室内で水を止める手段を失い、私は途方に暮れましたが、ふと洗面台の下を確認したところ、そこにはお湯と水の二つのハンドルがありました。しかし、洗面所の栓を閉めても当然キッチンの水は止まりません。家中を隈なく探した結果、ようやく発見したのは、なんとキッチンの床下に設置された収納庫を取り外したその奥の暗闇の中でした。懐中電灯で照らすと、床下を這う配管の分岐点に、ひっそりと真鍮製のバルブが設置されていました。なぜこのようなメンテナンスしにくい場所に配置されたのかは不明ですが、昔の設計では配管の美観を優先するあまり、実用的なアクセス性を犠牲にすることがあったようです。この経験から痛感したのは、止水栓は必ずしも目に見える場所に露出しているわけではないということです。特にリフォームを繰り返している住宅では、後の工事によって元々の止水栓が壁の裏や家具の背後に隠されてしまうケースが少なくありません。水漏れが起きてから探し始めるのでは遅すぎます。水が勢いよく噴き出しているパニック状態で、床下収納を外して暗闇に手を伸ばすなど、到底不可能です。私はその日、無事にパッキンを交換し終えた後、家族全員を呼んで止水栓の場所を共有しました。さらに、いざという時に迷わないよう、収納扉の裏側に「止水栓は床下にあり」というメモを貼り付けました。住宅の設備は、普段意識されないものほど重要です。自分の住む家の止水栓がどこに隠されているのかを知ることは、住まいへの理解を深める第一歩であり、万が一の際の救済措置を確保することに他なりません。
築古マンションの隠れた止水栓を自力で探し出した記録