私が水道修理の仕事に携わってから二十年近くになりますが、トイレの詰まりで呼ばれる現場の約三割は、皮肉にも「流せる」と銘打たれた掃除用シートが原因です。現場に到着し、まずはローポンプと呼ばれる強力な吸引機で作業を開始しますが、それで解決しない場合は便器を床から取り外す大掛かりな作業へと移行します。便器をひっくり返したとき、排水口に真っ白なシートが何層にも重なり、まるで石膏のように固まっているのを見るたびに、消費者の皆さんが抱いている「流せる」という言葉への過信を感じずにはいられません。特に厄介なのは、複数のシートが絡まり合い、そこに髪の毛や油分が混じって、フェルト状の強固な塊になっているケースです。これはもう、単なる紙の詰まりではなく、物理的な障害物です。お客様は決まって「パッケージに流せると書いてあったから信じていた」とおっしゃいますが、実際の配管はカタログのように滑らかではありません。特にマンションなどの集合住宅では、縦管に合流するまでの横引き管の距離が長く、そこでシートが停滞しやすい構造になっています。一度シートが管の途中で止まると、そこがフィルターの役目を果たしてしまい、本来なら流れていくはずの細かな汚れまでキャッチして、雪だるま式に詰まりを巨大化させていきます。私たちは修理の際、取り出したシートの残骸をお客様に見せるようにしていますが、皆さん、水に浸かっていたはずのシートが全くボロボロになっていないことに驚かれます。これが、掃除用シートに求められる「破れにくさ」という性能の代償なのです。修理費用も、便器の着脱が必要になれば数万円単位に跳ね上がります。高い勉強代を払う前に知っておいてほしいのは、どんなに高性能なシートであっても、それが「異物」であることに変わりはないという事実です。市販の強力な薬品を使用すればシートを溶かせると信じている人も多いですが、パルプ繊維を主成分とするシートを短時間で溶解させる家庭用薬品は存在しません。結局のところ、物理的に取り除く以外に確実な解決策はないのです。
水道修理業者が語る現場の凄惨な詰まりの実態と教訓