それは冬の朝のことでした。いつものようにトイレに入り、便座に座った瞬間に「あれ?」という違和感を覚えたのが、我が家のウォシュレットが寿命を迎えた最初のアナウンスでした。いつもなら温かく迎えてくれるはずの便座が、その日は冷え切っていたのです。最初は設定が節電モードになっているのかと思いましたが、ボタンを操作しても反応が鈍く、ノズル掃除ボタンを押しても、ノズルが弱々しく顔を出してすぐに引っ込んでしまいました。思えば、ここ数ヶ月、水の温まり方が遅かったり、洗浄中に少し変な音がしたりといった予兆はあったのですが、だましだまし使えていたので、見て見ぬふりをしていました。しかし、その日の朝を境に、我が家のトイレの快適性は完全に失われてしまいました。このウォシュレットを購入したのは、ちょうど十二年前、家を建てた時でした。それから一度も故障することなく、四人家族の私たちを毎日支えてくれたのです。しかし、調べてみるとメーカーが推奨する寿命は十年。我が家の製品はすでにその期間を二年ほど超えて「大往生」の状態だったわけです。慌てて近所の家電量販店へ向かいましたが、そこで店員さんから言われた言葉が印象的でした。「ウォシュレットは家電というより、過酷な環境で働く精密機械なんです」という言葉です。湿気が多く、常に水にさらされ、さらに人間の体重という重荷を毎日支え続ける。そんな中で十年以上動き続けること自体、日本の技術力の結晶なのだと改めて感じました。店員さんによると、寿命を超えて使い続けるリスクの中で最も怖いのは、目に見えない内部での漏電や発火だそうです。特に、操作パネルの隙間から水が入り込んで基板が腐食したり、内部のモーターが過熱したりすることは、外観からは全く分かりません。私の家の場合、最後は水漏れこそありませんでしたが、基板の寿命による動作不良でした。結局、その日のうちに最新モデルへの買い替えを決めましたが、設置工事までの数日間、ウォシュレットのない生活を送ってみて、いかに自分がこの文明の利器に依存していたかを痛感しました。お尻を温水で洗うという行為が、もはや贅沢ではなく、健康で衛生的な生活を送るための「最低限の条件」になっていたのです。新しく設置されたウォシュレットは、十二年前のものとは比べ物にならないほど進化していました。ノズルの除菌機能や、便器内の汚れをつきにくくするプレミスト機能、そして圧倒的な節電性能。古いものを大切に使うことも美徳ですが、ことウォシュレットに関しては、技術の進歩と安全性の観点から、寿命という節目を尊重して潔く更新することが、生活の質を劇的に向上させるのだと学びました。今度は、次の十年の節目が来る前に、しっかりと日々の点検を行い、感謝の気持ちを持ってお手入れを続けていこうと心に決めています。
我が家のウォシュレットが寿命を迎えたあの日