静まり返った真夜中の住宅街で、私はキッチンから聞こえてくる奇妙な音に目を覚ましました。最初は時計の秒針の音かと思いましたが、それはもっと不規則で、冷酷な響きを持った「ポチャン」という音でした。恐る恐るキッチンに向かい、照明を点けた瞬間に目に飛び込んできたのは、シンクの下からじわじわと広がる暗い水の影でした。パニックになりながらシンク下の扉を開けると、そこはすでに小さな池と化しており、収納していた調理器具や買い置きの調味料がすべて泥水のような汚水に浸かっていました。何が起きたのか理解するのに数分かかりましたが、排水管の継ぎ目が完全に外れ、先ほど流した洗い物の水がそのまま床下へと流れ込んでいたのです。私は震える手で大量のタオルを敷き詰め、バケツで水を汲み出しましたが、汲んでも汲んでも床の隙間から水が湧き出してくるような錯覚に陥りました。この時ほど、普段当たり前のように使っている水道というインフラの恐ろしさを痛感したことはありません。翌朝、駆けつけてくれた水道業者の方が、私の惨状を見てこう言いました。「キッチンの水漏れは、実は一週間前から始まっていたんですよ。扉の裏側にカビが生えているのがその証拠です」と。その言葉を聞いて、私は自分の不注意を呪いました。そういえば最近、キッチンに立つとどことなく湿っぽい臭いがしていたこと、床の一部が少し沈むような感覚があったことを思い出しましたが、すべて忙しさを理由に無視してしまっていたのです。直し方自体は、新しい排水ホースへの交換と接続部の補強という、時間にして一時間足らずの作業でしたが、汚水に浸かった床材の消毒や、腐食した棚板の張り替えにはその何十倍もの時間と費用がかかりました。この事件以来、私は毎晩寝る前に必ずシンクの下を確認し、わずかな音の変化にも耳を澄ませるようになりました。水漏れというトラブルは、ある日突然やってくるように見えて、実は長い時間をかけて私たちに警告を発し続けているのです。その警告を無視し続けた代償はあまりにも大きく、私は今でも深夜に物音がすると、あの日の冷たい水の感覚を思い出して心臓が鼓動を早めてしまいます。キッチンの平穏は、こうした地道な確認の上に成り立っているのだと、痛恨の思いと共に噛み締めています。
深夜の台所で鳴り響く警告音と水漏れに翻弄された私の体験記